今予備軍まで含めると2000万人を超えると言われる糖尿病、最も代表的な生活習慣病であり、先進国共通の課題です。近年発展途上国でも急速に患者数を増やしており、世界的な課題になりつつあります。
その糖尿病、何が恐ろしいのかと言えば合併症です。合併症というのは
「ある病気が原因となって起こる別の病気」または「手術や検査などの後,それらがもとになって起こることがある病気」の二つの意味を持つ医学用語である。引用元:合併症 - Wikipedia
糖尿病は血糖値を適正な状態に維持出来なくなってしまう病気で、それによって様々な合併症が引き起こされます。なかでも3大合併症と呼ばれるのが
・糖尿病神経障害
・糖尿病性網膜症
・糖尿病腎症
糖尿病神経障害
最も早く出てくる合併症です。
高血糖が続くと、末梢神経の代謝に異常をきたして不必要な物質が溜まってしまったり、神経に栄養を与える血管が傷ついて血流が低下したりすることで、結果として神経の働きも障害されてしまいます。引用元:神経障害 | 糖尿病情報センター
高血糖が原因で神経の働きに障害が発生する病気です。最も典型的な初期症状は、両足の裏のしびれで、ひどくなると殆ど痛みを感じなくなり、足にけがをしていても気づかなかったりする恐れがあります。その結果、知覚鈍麻をきたした足に傷が出来ても気づかず、壊疽を起こして切断しなければならなくなる糖尿病性壊疽の原因となります。
糖尿病性網膜症
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。引用元:糖尿病網膜症 - 目の病気百科|参天製薬
日本の中途失明原因の代表的な病気です。
網膜は眼球の中にある組織です。目から入った光は、この網膜で電気信号に変換されて視神経に伝わり、脳に送られて映像として認識されます。しかし、血糖値の高い状態が続くと、網膜の毛細血管に傷害が起こり、出血や、逆に十分な血液が流入しない虚血を生じてしまいます。。進展すると眼球の形を保っている硝子体の内部に出血する場合や網膜剥離を起こし、最悪の場合は失明します。大人になってからの失明原因の第一位と言われています。
糖尿病腎症
腎臓の中で中心的な働きをする糸球体と呼ばれる毛細血管の集合体が、高血糖状態が続くことによる動脈硬化などで次第に機能を失っていく病気です。 腎臓は血液の濾過装置であり、血液中の不要物を排出したり、必要な物を残す働きをしていますが、この機能が低下すると老廃物を上手く排出できなくなり、逆に必要な物が排出されてしまったりします。
進行すると、尿中タンパク質の量が増えて顕性蛋白尿となり、更に進行して尿毒症の状態になると、 人工的に老廃物や不要物を血液中から取り出す人工透析に頼らなくては生きていけなくなります。新規人工透析導入の第1位が糖尿病腎症です。
尿毒症
疲れやすい、体がだるいなどの症状が出現し、さらに、体のむくみ(浮腫)やせき・呼吸困難、胸に水がたまる尿毒症性肺などの症状も現れます。ほかには、食欲低下や吐き気などの消化器症状や、睡眠障害、知覚異常やけいれんなどの神経精神症状がみられることもあります。引用元:尿毒症 (にょうどくしょう) | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会
進行すれば、生命を脅かされる事になります。
人工透析
腎臓の働きが10%以下になると、血液のろ過が充分に行えず、水分や老廃物のコントロールができなくなってしまいます。引用元:人工透析とは - 透析 | 医療法人 社団美心会 黒沢病院
この状態になったときに、人工的に血液を濾過して老廃物を取り除く治療を透析療法と言います。
透析療法には人工的に行うオンラインHDF療法、血液透析療法、自分のお腹の腹膜を使って行う腹膜透析療法の3種類があります。引用元:人工透析とは - 透析 | 医療法人 社団美心会 黒沢病院
この透析療法、通常週3回行われ、1回の治療に4時間ほどを要します。
虚血性心疾患
3大合併症だけではありません。虚血性心疾患もそうです。
虚血性心疾患 (きょけつせいしんしっかん, IHD: Ischemic Heart Disease)とは、冠動脈の閉塞や狭窄などにより心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる疾患の総称である。引用元:虚血性心疾患 - Wikipedia
有名なのは狭心症とか心筋梗塞でしょう。
全虚血性心疾患発症に対する性、年齢、採血時間、地域を調整したハザード比は、正常群を1とした場合、境界群で1.65倍、糖尿病群で3.05倍でした引用元:糖尿病と虚血性心疾患との関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
なんと、糖尿病だと虚血性心疾患を発症するリスクは約3倍、境界型でも1.65倍になります。
狭心症も心筋梗塞も命にかかわる重大な病気で、命が助かったとしても、心臓の細胞が死ぬ壊死の範囲が広い場合、心不全や不整脈などの後遺症が残ります。
合併症を防ぐには
足の切断、失明、人工透析。そんな恐ろしい合併症を防ぐには、なんと言っても血糖値をコントロールし、糖尿病をそれ以上進行させないことです。
かつてはカロリーを主体に考えた食事療法が主流でしたが、中々成果が上がらず、それどころか悪化してしまうケースが少なくありませんでした。しかし、近年糖質制限という考え方が広まり、カロリーは多くても糖質を少なくすることで血糖値コントロールをする方法が主流になりつつあります。
カロリーも高すぎてはいけませんが、血糖値を上昇させるのはあくまで糖質であり、糖質さえ控えれば血糖値は上がらない、と言う単純で当たり前の考え方です。ただし、ただ糖質を控えればいいと言うものではなく、素人考えで実戦するべきではありません。必ず専門家の指導を受けて下さい。